通ってきた道

 前のめりに退社して帰り道の定食屋でヒレカツ定食を食べていると斜め向かいの家族連れの席で1~2歳くらいの女の子がサイレンのようなけたたましい奇声をヴォーヴォー上げていて、当然イライラする気持ちは生じれどもそこはまぁその年頃の子どもが健やかに育つ過程では自然なことで少なくとも子ども自身に罪はないのだと考えながら、そういえばよく「(騒がしくして周囲に迷惑を掛けるのは)お前も子どもの頃に通ってきた道なのだから許してあげなさい」という諭し方をする人がいるなと思念し、私自身がどんぐり坊やのようにかわいかった幼少時代、自他共に認めるほど聞きわけがよくおとなしい子どもだったから(それが良いことか悪いことかは別にして)、そのような「お前も通ってきた道だから」などという理屈を押し付けられても納得など到底できないばかりか、きっとそういう人は他のどんなことにおいても「自分がこうだった」ことは「相手もそうなのだ」と軽率に決め込む厄介な人なのだろうと今日の機会に烙印を押し、果てには目の前で騒いでいるこの女児も数十年先には「あなたも通ってきた道なんだから」と諭す側になるのだろうかと余計な想像を膨らませて私も奇声を上げたくなりつつ御会計。